あらすじ
昭和十六年春、真理子(九歳)は小笠原諸島母島に渡り、ユリと友達になる。
島は平和そのものだったが、次第に戦争の影が忍び寄ってくる。
十一月末、母島に数千の兵や馬が上陸し、五日間の演習を行った。
砲声、銃声が轟き、島は滅茶苦茶になった。
その直後の十二月八日、太平洋戦争が始まる。
生活は徐々に変わり始めた。昭和十九年六月より小笠原は激しい空襲を受けるようになった。
住民は山で避難生活をしていたが、強制疎開命令により着の身着のまま内地に避難する。
敗戦と同時に小笠原はアメリカに占領されてしまい、島民は帰ることができなくなった。
ユリとその家族の死を知った真理子は失意を抱えたまま生き続ける。
終戦から二十三年ぶりに小笠原は日本に返還された。
島はジャングルと化していた。
日本軍は空襲で焼け残った家を敵の攻撃の目印にされるという理由で破壊してしまったそうだ。
戦後五十年を経て、真理子はようやく決心し母島を訪れる。